カスパロフ期間限定復帰

チェスの元チャンピオン、カスパロフ氏が5日間の限定で公式戦に復帰しています。

カスパロフ氏といえば、15年間にわたってチャンピオンを保持し続けた伝説のプレイヤーであると同時に、1997年、コンピュータチェス、ディープブルーに敗れた歴史的なチャンピオンでもあります。

2014年羽生さんともチェスで対局を行い、2連勝しています。

そんなプレイヤーの復帰とあって、チェス会は大きく盛り上がっているようです。チェスはすでにコンピュータが人間に勝利したとされていますが(将棋もですね…)、その中にあっても実際に約20年前にコンピュータに敗れたトッププレイヤーであるカスパロフ氏の名声は全く損なわれておらず、変わらぬ尊敬を集めています。

いくらコンピュータ将棋が強くなったといっても、人間が将棋を指す魅力は損なわれないということを信じさせてくれる明るい話題だと感じています。
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29連勝とAI流

はじめに、まあスポニチのAI流ってのが定着するかどうかは知りませんが。

藤井聡太四段の29連勝、すごかったですね。

一気に将棋界隈が盛り上がっていてうれしい限り。
藤井四段が愛用していたというNEWスタディ将棋やキュボロが大人気になるなど関連グッズの人気もすごかったみたいですし、将棋もまだまだ安泰ですね。

連勝が途切れた後のことが若干心配だったりもしましたが、その後の対局を見ても杞憂だったようです。これからも頑張ってほしいと思います。

コンピュータが指す手を取り入れてきた棋士といえば千田六段が有名ですが、藤井四段もまたAIの指し手を参考に研究してこれだけの偉業を達成したということに、時代の流れを感じます。

これまでの常識にとらわれない、コンピュータが指すような手を指し、かつ強い。
で、それを聞いて、「やっぱり結局コンピュータが最強なんだから、もう将棋勉強する意味ないじゃん」と相変わらずいう人が周りにいますが、そういうことじゃないんだと言いたい。

従来、人の手でやってきたことを、コンピュータを使うことでより効率的に行い、技術を進歩させるというのは当たり前の光景ですよね。

コンピュータはあくまで人間が使う道具です。将棋だって、コンピュータの力を使って将棋という研究対象の解明に取り組んでいる最中です。

AI流という表現がAIを模倣するという意味なら印象は悪いです。が、これまでの定跡を覆すような手が見つかる、というのは単に科学の世界で新しい発見がコンピュータの助けによってなされるのと同じだと思います。

肉眼では見えなかった星を望遠鏡で見ることができるようになり、さらに電波望遠鏡でより詳しく見えるようになっただけのこと。AIがこれまでの常識を塗り替えて勝率の高い指し手を披露することに対して、将棋の歴史が否定されたと嘆くより、究極的な将棋の真理へ至るためのより正しい道へと進みやすくなったことを喜んだほうがいいのかなと。

今後も藤井四段が活躍することで、AIと人間のかかわり方がまたいい方向に進んでいくのも素敵だな、なんて思いました。

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電王戦の終わり

第2期電王戦第2局。最後の電王戦。

第1局では悪手と言われたPONANZAの初手3八金を、結局は名人をもってしてとがめることができませんでした。

この一点だけ見ても、将棋という文化が培ってきた実用性に裏付けられた様式美ともいえる定跡が、単なる様式美であったことを認めざるを得ないのかもしれません。

そして第2局、名人の初手2六歩に対してPONANZAの応手は4二玉。

第1局の初手3八金に続き、少なくともこれまでの将棋の常識的には「無い」手。なんなら悪手といってもいい手。

人間なら名人相手には絶対に指さないであろう手ですが、常識的に不利とか失礼とかそういった先入観なくこの局面で偶然4二玉を選択したPONANNZA。名人に定跡なしとはよく言ったもので、もはやPONANZAが名人を圧倒するだけの格を備えていることを思い知らされます。

「現在のソフトはもはや将棋の正解が書かれている辞書のようなものだ。」

某掲示板にこのような投稿がありましたが、全く正鵠を射ていると思います。

20手目、後手5一銀。ここで下がる以上はこの後5二、4三へと移動したいのだろうということは想像できますが、感覚的になかなか指しづらい手です。正解への道筋が見えていないと指せない手ともいえるかもしれないし、些細な手順の先後など勝敗に関係ないという信念にもとづいた手にも見えます。

そして5六角から、7七の銀がするすると動かされ、気づけば名人の穴熊がどんどんはがされていきます。

93手目、名人の王手を金で受けるPONANZA。先手穴熊は跡形もなく、後手陣は固く、名人が投了。投了図を見ると、圧倒的というしかありません。

今回で最後という電王戦で、叡王戦トーナメントを経て名人とPONANZAの対局が実現したことは、本当に奇跡だったと思います。現役の名人が決着をつける・・・、こんなにきれいな終わり方はないでしょう。将棋ファンとして、本当に感謝の気持ちしかありません。

もちろん、終わりといっても将棋が終わったわけではなく、コンピュータ将棋の意義がなくなったわけでもなく、それぞれ次の新しいことのはじまり。

次の一手、これから素敵な未来が訪れますように。

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初手3八金の意味するところ

最後の電王戦第1局、初手3八金。

一般的な初手は居飛車なら2八歩、振り飛車なら7六歩といったところで、中飛車決め打ちの5六歩でさえあまり良くないと言われるところ、3八金。振り飛車を好まない棋風だとしても、人には指せない手だろうと思います。しかも名人相手の大舞台。

この初手を見て、名人の勝利を予想した人も多かったのではないでしょうか。

ところが、この3八金は終局までこの位置で右の守りの要として大きな存在感を保っていました。3八金のおかげで先手が勝ったとは言わないまでも、結果的にまったく悪手とは言えない手です。

木村八段のいう通りで「マイナスにしか見えない手がマイナスになっていない」という、常識からすると奇妙な状況でしたが、「初手3八金はダメ」という先入観がそもそも人間の思い込みでしかなかったという事実を突きつけられたといってもよいのではないでしょうか。

例えば2手目3二飛もぱっと見不安な手で当初はどちらかというと異端的な印象がありましたが、いざ指してみると意外といけるということで升田幸三賞を受賞し、一定の地位を確立しています。

同様に、絶対に飛車を振らない、玉は5八で十分という信念のもと、初手3八金は悪い手ではないのでしょう。少なくとも実際にPONANZAがこれ採用し、名人を下したという実績ができた以上、PONANZAや名人にかなわない人間が「初手3八金は筋が悪い」と指摘したところで説得力はありません。

むしろ、この手の思い込みをいったん忘れて将棋の常識を見直したほうが建設的ですし、電王戦の意義があるというものです。

ところで「人間がコンピュータを攻略する際、定跡にない手を指すことで相手を混乱させる」といった戦法が有力だとされたことがあります。米長永世棋聖もボンクラーズに対して2手目6二玉を指しました。常識外の手でも、勝ちに結びつけようとする想像力というのは将棋において大事な要素なのかもしれません。

今回、PONANZAが指した初手は、単に常識に縛られないコンピュータが他の手と同様に評価したうちの一手だったかもしれませんが、電王戦という晴れ舞台で数ある初手の中から3八金が選ばれたという偶然は、考えようによってはとても面白いと思います。

名人に対して、常識外の、一見すると筋が悪い、人によっては無礼とまで言うような手で挑むPONANZAを見て、世間の評価を気にせず、純粋に名人との対局を楽しんでいる感じがすると思ったのは僕だけでしょうか。

続く7八金も、あまり見慣れず、どちらかといえば初心者の対局に出てきそうな形。定跡をいろいろ知って常識に縛られた人間よりも、無邪気に将棋を楽しむことができる、将棋にはまだ人間が知らない面白さがあると教えてくれるかのような一手。

今回、おそらく手順的には初手2六歩でもPONANZAが勝ったでしょう。ですが、そこで3八金を披露して世間を騒がせてみせたエンターテイナーぶりを偶然に発揮できるほど「持っている」ことが、PONANZAの魅力であり、強さの秘密かもしれません。

結果的にはPONANZAが持ち時間を3時間残しての圧勝とも言えますが、無難な手の応酬で勝敗が決まるよりもずっと面白い一局でしたし、名人にコンピュータが勝った歴史的な一局であるというだけでなく、その初手が3八金だったというところまで含めて、最高の対局だったと思います。

名人は勝算があると話していましたし、第2局も名局が生まれることでしょう。名人のリベンジが見られることを期待しています。

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電王戦が今回で終わる件

「今までの形式の電王戦は今回が最後になる」そうですが、妥当な時期ですよね。

このままの形で続けていってもこれ以上は双方得るものがなさそうですし、コンピュータの使用ルールを定める等、先に片づけておくべき問題がありそうですしね。

羽生さんにとっては残念かもしれませんが、普通に考えて負けて当たり前(少なくとも数年後には)の勝負なんか受けたくはありませんよね。

仮にオリンピックの100メートル走にバイクの出場枠があって、でも人間が負けたら「やっぱり人間はもうバイクに勝てないんだ」なんて世界中の人にしたり顔で言われたり、負けたことに同情されるとしたら、陸上選手もやる気がなくなることでしょう。そんなこと分かってるって。

現時点でコンピュータが人間最高の棋力を上回っていると考える人も多いのではないかと思いますが、それでもまだコンピュータと人間が互角に戦える段階の、ちょうどこの節目で最後の電王戦が現役コンピュータ最強のPONANZA対現役名人の対局になったいう事実にロマンを感じます。

自動運転や人工知能の話題が多くなり、何かとAIブームの今年ですが、そういう意味でも時代的に意義のあるイベントになりそうです。

「今までの形式」が最後ということは、新しい形式を検討しているということですから、興味深いです。将棋界が良い方向へ動いていると感じます。

電王戦が楽しみなのはもちろんのこと、その後の展開も面白くなりそうですね。

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